「口腔内科学」の名称は一般的にOral Medicineの日本語訳と考えられている場合が多く、すでにアメリカにおいては歯科医学における一つの分野を占めており、American Academy of Oral Medicineという専門学会が設立されています。
この学会では、歯やその支持組織とそれに関連した組織に関する疾病の原因、資料に関する研究ならびにその予防に対する知識の普及を目的としています。
近年、日本の歯学部付属病院では「口腔内科」あるいは「オーラル・メディシン科」の診療科が開設されています。
各病院の口腔内科外来での治療方針の共通点は、歯科のみならず医科的知識に基づき、全身的評価を行い、舌癌、歯肉癌などの口腔悪性腫瘍をはじめ、エナメル上皮腫などの良性腫瘍、白板症、アフタなどの口腔粘膜疾患、唾液腺疾患のほか、口腔顎顔面領域に生じる変形、外傷、嚢胞、顎関節疾患、口腔顔面領域の神経疾患などのあらゆる疾患を対象とし、症状として疼痛、口渇、口臭、味覚障害などに対して検査・診断・薬物療法を行うとともに、早期発見による最小限の外科的手術や器官温存のための内科的アプローチを特徴としていると見受けられます。
「口腔内科」の診療は口腔外科系の歯科医師が対応していることが多いと思われますが、将来的には、口腔外科の専門医から分割されて歯科における予防歯科や診断科など他科と連携し、新しい専門性の診療科に発展していくものと予想されます。
「口腔内科」や「オーラルメディシン」は歯科におけるさまざまな診療科と同時に、口腔治療に対して医学的背景への理解を基に、非外科的手法で口腔疾患の治療にあたる、歯科医学の重要な一分野を担う学問として確立されていくと思われます。
今後、歯科医師は、従来からの口腔外科の発想と口腔内科の発想をともに日々の治療に取り入れていく必要がある時代になると言えます。
王 宝禮